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Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー - 過去記事一覧
- ユニットの選定
- ウーファーのT/Sパラメータ測定
- エンクロージャーの特性シミュレーション
- エンクロージャーサイズの決定
- エンクロージャーの詳細設計
- エンクロージャーの組立て
- Far Field測定とクロスオーバー周波数の検討
- Near Field測定
- 特性改善のためのエンクロージャー修正
- Far Field測定とNear Field測定をやり直し
- クロスオーバーネットワークの設計と製作
- エンクロージャーの塗装と組み込み
- 仕上げのNear Field測定と吸音材・ポートの調整
- ネットワーク組み込み後のFar Field測定
前回の記事で以下の2つの改善ポイントが見えたので対策します。
- コイルの磁束の干渉を避けるために数を3以下に減らしたネットワーク回路に変更する。
- バスレフポートのポート径を小さくして長さを短くすることで、定在波とポート共鳴の周波数をずらす。
ネットワーク回路のコイルを減らす
コイルの数が4つと多くネットワークボードをエンクロージャー内に設置するときに、コイルの向きをそれぞれ違う方向にしたとしても磁束の干渉が避けられない状態でした。
VituixCADでのシミュレーションと比較しても干渉は大きな影響はなさそうでしたが、中域の落ち込みは少し気になるので回路を変更します。
ディッピングフィルターをスピーカーユニットと並列にしていた以前の回路から、フィルタの位置を移動させることでコイルを1つ減らせました。
特性としてはListening Windowでの50Hz-20kHzの変化が±2dB程度におさまっています。とはいえこの特性は以前のネットワーク回路と似たようなレベルで大きな変化はありません。
推定Preference Ratingは改良前が6.57でしたが、少し下がって6.5となってしまったのは残念です。
このネットワークで一度製作しましたが問題が発生しました。手持ちのD級アンプにつなぐとインピーダンスが低すぎるというエラーが出るのです。
回路を見直すとウーファーのネットワーク部分で、ディッピングフィルタの0.47uFとローパスフィルターの12.2uFが高周波領域でショート状態になっていると気づきました。
新ネットワーク回路のショート問題の解決
ショートの問題を解消したのが以下のバージョンです。ディッピングフィルターのコンデンサに直列に抵抗を入れました。
全体的に定数を見直して特性をあまり変えることなく、Reverse Nullが大きく出るようにしました。
推定Preference Ratingは6.55まで上がったので、ほぼ以前の回路と疎遠ないレベルになりました。
クロスオーバー周波数は以前に作った回路と同じく3kHzとなっています。DIの値からしてもやはりこの辺りが良い塩梅のようです。
完成した新しいネットワーク回路
製作したボードは以下のものです。
以前のボードは素子の数が多くて2枚のボードに分けていましたが、部品点数が減ったので1枚のボードにまとめました。それによってエンクロージャー内での取り回しが良くなりました。
ハイパスフィルターの部分はごちゃごちゃしてしまってますが、エンクロージャーのメンテナンス口が円形で中に入れるためにはこういう配置にせざるを得ない感じでした。
組み立て後にインピーダンスを測定してシミュレーションと差が発生していないか確認します。
シミュレーション | 実測 | |
---|---|---|
ウーファー部のインピーダンス | ||
ツィーター部のインピーダンス | ||
総合インピーダンス |
だいたいシミュレーション通りで問題なかったので、これでネットワークボードは修正完了です。
新しいポートのアタッチメントの製作
ポート径を小さくすることで長さを短くしてポート共鳴のピークを消すことができないか確認するために、新たにアタッチメントを製作しました。
以前に製作したアタッチメントはポート径が35mmでしたが、今回製作したものはポート径28mmです。
ポート径を小さくすることでポート長を40〜50mm程度に短くすることができ、ポート共鳴を起こす周波数が定在波の周波数帯の外に出ます。
一方で音量を上げた場合のポート内の流速などが気になりますが、大音量で聴く機会があまりないので問題にならないと思っています。
ポートの調整
VituixCADで新しいポート径でエンクロージャーのシミュレーションを行なったところ41mmのポート長が最適のようです。
そこでポート長40mmと45mmで比較測定を行います。
ポート長40mm | ポート長45mm | |
---|---|---|
ポート出力 | ||
ウーファー出力 | ||
中点 |
ポート出力を見ると以前の測定であったような1.8kHz付近のピークが消失しました。狙い通りの結果です。ウーファー出力にも特にピークやディップが現れておらず、きれいなカーブです。
中点での測定結果を見ると、わずかな差ですが60〜200Hzの部分で40mmの方がフラットな特性です。
よって40mmを採用することにしました。
次回の記事
次回は最終測定結果と試聴した感想を書こうと思います。