以前の記事で製作したヘッドホンアンプ
ですが、以下の点が気になっていました。
- 入力電圧が5Vでは動作できず、6Vが必要なためUSBポートを電源として利用できない。
- ヘッドホンの保護回路がなく、万が一のときに心配。
これらの問題を解消するために改修を行ったので、その内容を書きます。
改修した点
5Vで動作しない問題については、
の記事で作ったACアダプタのノイズフィルタ基板のパターン引き回しが良くなかったのか電圧降下が大きくて、DC/DCコンバータが動作が動作できる電圧を下回ってしまうためでした。
保護回路が無い点については、DC漏れが起きた場合の対策がとられていないことが気になっていました。
ショートなどが起こった場合の最大電流についてはDC/DCコンバータ側で自動的に制限されていますが、現状ではDCが漏れた場合は検知できない可能性が高いです。
これらを改善するためにノイズフィルタ基板、DC/DCコンバータ基板、DC漏れ検知ミュート基板の設計を行い、TPA6120ヘッドホンアンプに組み込みました。
基板の改良点
ノイズフィルタ基板
ACアダプタのノイズフィルタ基板については直流抵抗を減らすことを目的として再設計しました。
- 入力のヒューズをポリスイッチに変更し、抵抗値の低いものを選定した。
- 入力のコンデンサを大容量なものにした。
- ノイズフィルターは後述の理由からDCコンバータ基板側に移すので、こちらは簡易なフィルタとして村田製作所のブロックタイプエミフィルBNX012-01に変更。
- 複数のDC/DCコンバータ基板に接続できるように分配基板として使えるようにした。
DC/DCコンバータ基板
こちらの基板はバックリップル電流対策を主に行います。
DC-DCコンバーターのバックリップル電流対策:DC-DCコンバーター活用講座(23) 入力および出力フィルタリング(1)(2/3 ページ) - EDN Japan に記載のある内容をベースにして行いました。
今回改修するヘッドホンアンプのようにいくつか必要な電圧があり、複数のDC/DCコンバータを並列に接続することが多々あります。個々のDC/DCコンバータのバックリップル電流が他のDC/DCコンバータに影響しないようにLCフィルタ回路をDC/DCコンバータ基板側に移すことにしました。
- フェライトビーズとコイル、コンデンサからなるフィルタ回路を前述のとおりこの基板側に移動した。
- 入力コンデンサをパラで搭載できるようにして容量を増やしESR値を下げることにした。
- パターンを見直して入力から出力までが直線的になるようにデザインして細長い基板にした。
- タカチHITケースの側板に2枚を並べられるようにサイズを調整しました。
DC漏れ検知ミュート基板
DC漏れを検知してヘッドホンアンプ基板の出力に入っているリレーをOFFにする回路です。リレーのコイルへの給電部分の前に挟んでリレーの電源を落とすようなイメージで製作しています。
DC漏れを検知する部分はアンプのリレー式保護回路: new_western_elecの回路を参考にさせていただきました。
ケースへの組み込み
ヘッドホンアンプのケース(タカチHITアルミケース)側板の部分へ電源基板を取り付けます。縦方向に2枚がちょうど収まる大きさにしたのできっちりおさまりました。
なお、DC/DCコンバータ基板は出力の大きさが異なるモジュールも取り付けられるようにドーターボードを製作しました。ドーターボード上には入力コンデンサと出力コンデンサ、ノイズのバイパスコンデンサを裏面に取り付けています。最低負荷が必要ならその抵抗も取り付けた方がいいと思いますが、データシート上にはそういった記述がなかったので(ドーターボード側には)取り付けていません。
これまで述べていなかった改善点としてマイコン+7セグLED用5Vを別の電源基板から取るようにしました。これまではTPA6120用の正負電源の正側と共用していたのですが、少しでも音質改善に繋がればと別電源に分けました。基板をきっちり収まる大きさにできたので実現できた改良点です。
DC漏れ検知ミュート基板はヘッドホンアンプ基板の出力をとってくる関係で仕切り板の方に取り付けました。非常にコンパクトな基板なので取り付けは問題なくできました。
性能評価
新たに製作したDC/DCコンバータ基板は回路を少し変えたので念のため性能評価を再度行いました。
約10mVp-p程度のスパイクノイズが出ています。前回製作した基板より少し増加していますが、許容範囲でしょう。
500kHz付近に山があります。これは使っているDC/DCコンバータがその周波数でスイッチングしているからでしょう。
DC/DCコンバータを使った正負電源基板の製作 - 工作とかオーディオとかで作った定電圧基板を取り付けた状態で同じように測定してみます。
きれいに500kHz付近に山が消えました。1MHzを超えたあたりのノイズは残ってしまっていますが、これは取りにくい帯域なので仕方ないでしょう。
音の変化
低域の勢いが良くなり、ポンポンといった感じがよく表現できるようになりました。 マイコン・7セグLED用の電源を別としたことと、直流抵抗の減少、コンデンサの追加の効果が出て瞬発的な電流供給能力が上がっているのでしょう。
また当初の目的であった5V電源で動作するようになったのでACアダプターの選択肢が増えました。
これでヘッドホンアンプの改良は終わりにします。そろそろ2wayスピーカーの仕上げの作業にうつりたいですね。