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Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー - エンクロージャーサイズの決定

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はじめに

前回の記事でエンクロージャー容積は9Lに決まりました。次はエンクロージャーのサイズを決めていきます。

エンクロージャーのサイズを決めるにあたっての制限事項を洗い出したあとに、定在波とディフラクションのシミュレーションを行い、実際のデザインのサンプルを作って最終的なサイズを決めていこうと思います。

各種制限事項の洗い出し

主に自分の設置環境の関係で出てくる制限などをまとめます。

エンクロージャーの制限

  • 板厚は18 or 21mmを想定。
  • 設置場所の関係で、幅240mm程度、高さ440mm程度、奥行き230mm程度まで。
  • 角丸めを行うために幅176mm以上必要。

ポート位置の制限

  • ポート位置はエンクロージャーの高さ方向の定在波の影響を受けにくい中央または1/4点に置きたい。
  • 設置場所の関係でできればフロントポートが望ましいがリアポートでも可。
    • フロントポートの場合は、最低でも高さ360mmが必要だがポート位置のことも考慮すると440mmくらいは必要。

定在波のシミュレーション

各方向の定在波があまり重ならない幅・高さ・奥行きの組を出して構成案とします。

制限内で可能なサイズを何度かシミュレーションした結果、以下の4つの組み合わせが候補になりました。

サイズ 形状 定在波
(A) 幅186
高さ432
奥行212
スリムで縦長 f:id:mia_0032:20210720104404p:plain:w240
(B) 幅192
高さ440
奥行217
Aの板厚21mm版 f:id:mia_0032:20210720104423p:plain:w240
(C) 幅208
高さ343
奥行234
幅広
高さと奥行きが長め
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(D) 218
高さ438
奥行192
板厚21mmの幅広かつ縦長
奥行きが短い
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(C)だけバスレフポートの共振周波数の近くに定在波の重なった部分が見られます。ポートの長さを調整する場合に気をつける必要がありそうです。

それ以外については周波数が分散しており、吸音材を使えば対処できるのではないかと思いました。

ディフラクションのシミュレーション

次に各案のディフラクションを見てみましょう。

デザインアクシスはツィーターとウーファーの中点をとしています。

ディフラクションとツィーターの合成特性の出力にはD2608/913000のデータシートの値を用いています。

ディフラクション 軸上特性
(A)幅186高さ432奥行212 f:id:mia_0032:20210720225818p:plain:w240 f:id:mia_0032:20210721092052p:plain:w240
(B)幅192高さ440奥行217 f:id:mia_0032:20210720225829p:plain:w240 f:id:mia_0032:20210721092104p:plain:w240
(C)幅208高さ343奥行234 f:id:mia_0032:20210720225840p:plain:w240 f:id:mia_0032:20210721092116p:plain:w240
(D)幅218高さ438奥行192 f:id:mia_0032:20210720225854p:plain:w240 f:id:mia_0032:20210721092133p:plain:w240

(A)と(B)のディフラクションは、3.3kHz前後にディップが見られます。これは(C)→(D)といくにつれて小さくなっているため、幅方向の大きさが影響を与えてそうです。

(C)や(D)のディフラクションでは6kHzあたりのディップが大きくなっています。ツィーター取り付け位置とバッフル上部の位置関係が関係しそうな周波数ですが、そのあたりは(A), (B)でも条件を揃えており、原因はわかっていません。

合成した軸上特性を見ると、2kHz前後の肩の特性が(A)(B)よりも(C)(D)の方がなめらかです。このあたりはクロスオーバーの周波数になるので、ピークが小さい方がウーファーと繋ぎやすそうです。

またディフラクションでも現れていた3.3kHz前後と6kHzあたりのディップを見てみます。

  • 3.3kHz前後のディップ: (A)(B)(C)には大きめに出ています。それらと比較すると(D)は小さいです。

  • 6kHzあたりのディップ: 逆に(C)(D)が大きめに出ており、(A)が最も小さい結果となりました。

6kHzのディップについては、データシート上はユニット自体にも30°特性で大きなディップがあるため、ネットワーク回路で少し持ち上げるのも手かとは感じています。また実測してから検討したいと思います。

結論

ディフラクションや合成した軸上特性を見る限りでは、(C)または(D)案を採用するのがウーファーとのクロスオーバーを設計しやすそうで、良いと思いました。

C案のサイズはオーソドックスですが、奥行きの制限にはギリギリです。

バスレフポートの位置がリアになってしまうため、推奨項目のフロントポートという条件を満たすことはできていません。

D案で気になる点はデザイン上のバランスです。

高さ438mmとブックシェルフとしては大型なわりに、奥行きが192mmしかありません。幅 > 奥行きとなる形で高さがあるため物理的に不安定そうです。見た目のバランスも気になります。

両者のデザインを比べるためにFusion360でモデルを作ってみました。

C D
幅208 高さ343 奥行234 218 高さ438 奥行192
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見た目のバランスではDも悪くなさそうです。

ただDは物理的に不安定そうなので、それを改善するために台座をつけたデザインを作ってみました。

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台座をつけたデザイン

ミニチュアなトールボーイという見た目で結構良さそうです。台座は自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブックのトールボーイ型の作例を参考にモデリングしました。

ただ台座を付けた影響で高さが少しオーバーしてしまっています。もう少し小さくできないか検討していこうと思います。

Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー - エンクロージャーの特性シミュレーション

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目標

前回の記事でT/Sパラメータを測定したので、そのT/Sパラメータからエンクロージャーを設計します。形式はバスレフ型です。

まず低域をどの程度伸ばすかを決めます。決定には以下の記事を参考にしました。

diy-audiospeaker.sub.jp

この記事ではスピーカーの評価スコアであるPreference rating 推定スコア6.0以上を目指して設計が進められています。

EPR 6.0以上を目指して設計する場合、LFXは約1.72以下、つまりf6が53.5 Hz以下である必要があることが分かりました。

との記述があり、製作しているスピーカーもf6=51.9Hzで設計しているようです。

これを目標として採用し、52Hzで-6dBとすることにします。

それではVituixCADを用いてシミュレーションします。

アライメントからの計算

計測したウーファーユニットのT/Sパラメータから、代表的なアライメントを用いてエンクロージャー容積とポート共鳴周波数を算出すると以下の表のようになりました。

エンクロージャー容積 ポート共鳴周波数 -3dB周波数 -6dB周波数
SBB4 4.74 L 57.8 Hz 81.2 Hz 62.6 Hz
QB3 4.86 L 65.8 Hz 74.4 Hz 62.6 Hz
SC4 4.76 L 63.1 Hz 76.6 Hz 62.6 Hz

上記のアライメントのうち、QB3とSC4はネットワーク回路の抵抗値(暫定でスピーカーケーブル(0.1Ω) + コイル(0.2Ω) * 2 = 0.5Ω)を加味すると、130Hz前後が少し盛り上がることがわかりました。

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ネットワーク回路を加味した場合の低域のふくらみ

よってSBB4で算出された値をベースに、目標の52Hzで-6dBという条件を満たせるかシミュレーションしていきます。

エンクロージャーを大型化した際の群遅延をシミュレーション

本作はブックシェルフ型で設計しますが、設置する空間には余裕があるため最大で12L程度まで大型化することが可能です。

このユニットでのエンクロージャーの大型化については、例えばEllam-Discovery-15では11L程度のサイズを採用し低域を伸ばしているようです。

エンクロージャーを大型化すると低域が伸ばせる反面、群遅延が問題になります。

Scan-Speakのサイトにあるスプレッドシートで調べると60Hzのあたりで12msあたりまでなら許容範囲のようです。

SBB4で算出されたポート共鳴周波数は約58Hzですが、調整次第では上下する可能性もあるため共鳴周波数を60Hzとして12msを超えない、最大容積を探します。

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容積10Lでのシミュレーション

結果としては10Lと設定した時点で12msを超える状態になりました。

調整で共鳴周波数は前後する可能性はあり、少し余裕を見て上限値は9.5Lとした方が良さそうです。

ポート直径を算出

バスレフのポートの直径についてはパワーコンプレッションを起こさないための最小面積を計算式で求めることができます。

ポートの共鳴周波数を60Hzとし、今回のユニットの振動板面積と最大振幅から算出すると、以下のようになります。

(3.23 * 80 cm2 * 0.42 cm) / (60^0.5) = 約14 cm2

これは直径 約42mmに相当します。

今回は出入口の両方をフレア付きの形状にしたいと思っています。国内のショップではそのような形状のポートは売っているところを見つけられなかったため、2本の片側フレア付きポートを接合する方針にします。

計算した直径に近い、ちょうど良さそうなポートがありました。

mx-spk.shop-pro.jp

これを使うことにします。

52Hzで-6dBを満たすポートの共振周波数のシミュレーション

容積の上限値よりもさらに余裕を持って、エンクロージャーの容積を9Lと固定してポートの共振周波数を上下させて、目標の52Hzで-6dBを満たす条件を探します。

ポート共鳴周波数 -3dB周波数(86.5dB) -6dB周波数(83.5dB)
60 Hz 59.1 Hz 52.6 Hz
59 Hz 58.2 Hz 51.9 Hz
58 Hz 58.2 Hz 51.1 Hz
57 Hz 58.2 Hz 51.1 Hz
56 Hz 58.2 Hz 50.4 Hz
55 Hz 58.2 Hz 49.7 Hz
54 Hz 59.1 Hz 49.7 Hz
53 Hz 59.9 Hz 49.0 Hz
52 Hz 61.7 Hz 48.3 Hz

-3dB周波数が低く-6dB周波数も低い、共鳴周波数を55Hzした際のシミュレーション結果が以下です。

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容積9L, 共鳴周波数55Hzのシミュレーション

グラフを見るとフラットというよりは少し傾きがあります。低音の量感が不足する可能性はあります。

-3dB周波数が同じで-6dB周波数が一段階高くなる共鳴周波数58Hzにしたところ、フラットに伸びた低域と目標の52Hzで-6dBを満たすことができました。

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容積9L, 共鳴周波数58Hzのシミュレーション

群遅延は55Hzで12ms以下に抑えられているので許容範囲内です。ポート長さも直径に対する長さの比が2.5以下であるので、大きな問題にはなりにくいでしょう。

この設計に決定し、次の記事で具体的なエンクロージャーを設計していきます。

Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー - ウーファーのT/Sパラメータ測定

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はじめに

前回の記事で選定したScan-Speak Discovery 15W/8434G00のスピーカーボックスを設計するにあたり、T/Sパラメータを測定する必要があります。

自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック 自作スピーカーマスターブック自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブックといった本を参考にしながら、測定を行っていきます。

測定用ツールを製作

まずは測定のためのツールを一式作ることから始めました。

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フリーエアー下でのスピーカーユニットの固定具

これはフリーエアーの状態、つまり何もユニットに負荷がかからない状態でインピーダンスを測定するためのジグです。

ボルトと板でユニットの磁石部分を挟み込んで固定します。

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デルタコンプライアンス法での測定用ボックスの製作

デルタコンプライアンス法という測定法を行うときに、密閉箱にユニットを取り付けた状態でインピーダンスを測定する必要があります。

そのための密閉箱を製作しました。ユニット自体はクイックバークランプで固定するため取り付けネジ穴は開けていません。

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インピーダンス測定用の回路

この回路はパワーアンプの出力をオーディオインターフェースのライン入力に戻すためにレベル調整を行うものです。

これらを用いて測定を行っていきます。

測定の様子

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フリーエアー下での測定の様子

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密閉箱に取り付けての測定の様子

T/Sパラメータを計算するには、フリーエアー下と密閉箱に取り付けた状態の2つのインピーダンス特性が必要になるため、それぞれをLIMPを使って測定しました。

測定

48時間経過時

ブレークインを始めて48時間が経過したタイミングで一度測定を行いました。

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ユニットAのフリーエアーでの測定値

ユニットA ユニットB
Fs 67.35 Hz 69.35 Hz
Qts 0.43 0.43
Vas 6.23 liters 5.56 liters

まだFsやQtsが高いように感じます。

同じウーファーを使った自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック 自作スピーカーマスターブックの作例で測定した結果が掲載されていますが、その値と比べてもFsやQtsは高めに出ています。

そこであと24時間、少し出力を上げてブレイクインを続けることしました。

72時間経過時

追加で24時間のブレークインを行い、72時間経過した後に測定した結果が以下です。

ユニットA ユニットB 平均値
Fs 58.59 Hz 63.14 Hz 60.865 Hz
Qts 0.36 0.38 0.37
Vas 8.98 liters 7.43 liters 8.205 liters

だいぶ前述の作例の値に近づいてきました。15cmウーファーの値としても妥当に見えます。そのためこの測定値でいくことにします。

おわりに

これでウーファーのT/Sパラメータを測定することができたので、ボックスの設計に移れそうです。

ユニットの測定したEBPは約150となっておりバスレフ型向きのユニットです。

そのためバスレフ型のボックスを設計していきます。

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