Near Field測定 | Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー

前回の記事でFar Field測定とクロスオーバー周波数の検討まで終わりました。

前回に課題となっていたバスレフポートのチューニングを行います。低音域をNear Field測定し、ポートや吸音材の調整で特性を改善します。

Near Field測定

Near Field測定の様子

ポート長の調整

まずはポートの出口にマイクを設置して、ポートの出力を確認していきます。

使ったポートはJantzenAudio ダクト P43-123です。まずは何も加工しない123mmの状態で測定してみました。

ポート長123mmでの測定結果

チューニング周波数は50Hzあたりでしょうか。当たり前ですが、設計値よりもだいぶ低いです。

1.1kHz付近に大きなピークが出ており、これが全体の特性に影響を与えそうです。高域の測定限界を超えているため参考値程度ですが、影響はかなり大きそうです。

実際に前回の記事でウーファーの特性の1.1kHzあたりに明確にディップが出ていました。

このピークを対策していきます。ポートの出力比で-20dBくらいになれば、あまり影響が出なくなりそうですね。

まずポート共鳴なのか定在波の影響なのかを特定します。ポート長を変えてみたのが以下の結果です。

ポート長 ポート出力
123mm
ポート長123mmのポート出力
110mm
ポート長110mmのポート出力
100mm
ポート長100mmのポート出力
95mm
ポート長95mmのポート出力

ポート長を短くするとピーク周波数が僅かに高くなっています。そしてピークの音圧が下がっています。

最初はポート共鳴かと思ったのですが、それにしてはピーク周波数の変化が小さいので、定在波を拾っている可能性があるなと思い始めました。


吸音材の調整の前に、もう少しピークを抑えられないかと思って、ポート形状を変更してみました。

両端フレアのポートを製作

このポート(長さ100mm)を取り付けて測定した結果が以下です。

両端フレアのポートの出力

片端フレアの時と比べてピークをだいぶ抑えることができました。両端にフレアをつけることは効果が大きいとわかりました。


ポート共鳴でないことを確認するために、ポート長を45mmと半分にしてみた結果が以下です。

ポート長45mmのポート出力

1.2kHzあたりのピークは少し下がった感じですが、900〜1.1kHzあたりのレベルはガクッと下がりました。

定在波のシミュレーション結果

定在波のシミュレーション結果を見ると、900〜1.1kHzあたりは高さ方向と幅方向にあたります。1.2kHzあたりは奥行き方向です。

この結果や前述のポート長の短くした時の結果を見るに、ポート長を設計よりも短くした方が良さそうです。

吸音材の調整

次は吸音材がどの程度必要なのか、確認します。

吸音材の有無でのポート特性の比較

ポート長90mmのときに黄色が吸音材を入れない場合で、緑色がウーファーの裏側あたりにホワイトキューオンを詰めた場合です。

吸音材を入れることで400Hz以降のピークが小さくなっています。このあたりには吸音材は必須と言えそうです。

調整した吸音材の配置

ポートからの出力を見ながら1.2kHzあたりのピークが小さくなるように調整した配置です。これをベースに今後、調整していこうと思います。

まとめ

ポート出力の漏れの対策として、以下が効果がありそうとわかりました。

  • 設計よりもポート長を短めにする。これを実現するにはポート径を小さくする必要がある。
  • 片側フレアではなく両端フレアのポートを使う。
  • ピークは定在波の影響なので、吸音材の配置を調整することで、多少はピークを抑えることができる。

一方で課題としては、以下のようなものが浮かび上がってきました。

  • 既存の穴を小さくするのは難しいので、ポート径を小さくするにはアダプタを作らないといけない。
  • 両端フレアのポートは長さ調整がしずらい。
    • 片端フレアのポートはテーパーがついているので径を揃えて接合するには両方を調整しなければいけない。
    • Precision Portが使えれば良いが、この径はラインナップに無い。

これらの課題を解決して、対策を行うためにPrecision Portのようなフレアのついたアダプタのようなものの製作を検討しています。

次回の記事

特性を改善するためにエンクロージャーやポートの再加工を行います。

©2023 みや All rights reserved.