工作とかオーディオとか | 測定で作る自作スピーカー製作記

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2wayスピーカーのクロスオーバーネットワーク設計と製作の実例 | Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー

本記事では、Scan-Speak Discoveryシリーズを使った2wayスピーカーのクロスオーバーネットワークの設計意図と製作の実例を解説します。VituixCADを用いたシミュレーションをベースに、ウーファー側・ツィーター側それぞれの回路構成と設計上の判断を説明します。

前回の記事で満足のいく結果が得られたので、その測定結果を使って特性のシミュレーションを行いながら、ネットワーク回路を設計・製作します。

クロスオーバー周波数の決定

シミュレーションには定番のスピーカー設計ソフトVituixCADを使います。

エンクロージャー修正後もウーファー、ツィーターそれぞれのクロスとなる部分のDirectivity Index(DI)に大きな変化はなく、2.5kHz付近から指向性に差が出てくる状況は変わっていません。

修正後のDI

ツィーターのデータシート上の推奨クロスオーバー周波数は2次のオーダーで4kHzとなっています。

今回は2次よりも急峻なクロスにする予定なのでもう少しクロスオーバー周波数は下げられそうです。上図のDIの値からすると3.5kHz以下が望ましいと判断しました。そこで目標値として3kHzを設定します。

ネットワークの設計

いろいろと試行錯誤した結果、ウーファー側が3次のLinkwitz-Rileyフィルタとなり、ツィーター側が4次のLinkwitz-Rileyフィルタで非対称なクロスオーバーとなりました。ウーファーとツィーターの特性上の都合から非対称としています。詳細は後述します。クロスオーバー周波数は3kHz付近です。

設計したネットワークとシミュレーション結果

推定Preference Ratingのスコアは約6.5となりました。なおPreference Ratingはスピーカーの音質を数値化する指標のひとつです。低域が思ったよりも伸びていることが、スコアが伸びた要因の一つです。

リバースヌルの確認

Reverse Nullは小さめですが、一応出ています。

ここからはウーファー側、ツィーター側それぞれのネットワークの設計意図について説明します。

ウーファー側のネットワーク設計

ウーファー側のネットワーク回路

基本構造は2次のローパスフィルターですが、初段のコイル(2mH)を2つに分割して片方に抵抗をつけることで減衰特性を抑制しています。

バッフルステップ補正を行うためには大きめのコイルが必要ですが、そのままだと以下の2点の問題が発生するため、コイルを分ける構成にしました。

  • クロスオーバー周波数での減衰が大きすぎる。
  • 200Hz〜400Hz付近での盛り上がりが出てしまう。

この構成をとることできれいにバッフルステップ補正をかけることができたのですが、高域のブレイクアップが少し残ってしまいました。それを抑えるために8.5kHzあたりを狙ったディッピング回路を入れてあります。

ツィーター側のネットワーク設計

ツィーター側のネットワーク回路

こちらは3次のハイパスフィルターにI型アッテネータとインピーダンス補正回路を入れた回路です。

ツィーターの9kHz以上の暴れがひどくて特性を整えるのに苦労しました。やっぱりユニット選定の時点から暴れの少ないものを選択すべきだったなと痛感しました。

インピーダンス補正回路は必要ないと思うのですが、そのあたりの領域の特性を整えるのにつけています。一般的にインピーダンス補正回路は音質に影響するという意見もあるため、他の代替手段を考えた方がいいかもしれません。そのあたりはまた聴きながら調整したいと思います。

7-8kHz付近に大きなディップが見られます。これはシミュレーションする限りではバッフルのエッジディフラクションによるもののようです。かなり角を削ったことでもともと6kHz付近に出ていたディップが高域側に移動したようです。

データシート上はツィーターの7-8kHz付近に少しピークがあるのでそれと打ち消し合わないかなと思ったのですがダメでした。ここをピーキングフィルタで補正かけると全体の特性が崩れてしまうのでこのままにしてあります。

7-8kHzのディップを抑える方法として見つけたのは、ウーファーのディッピング回路の周波数を下げてウーファーから補完するような形です。ただ分割振動のはじまったウーファーの帯域を使うのは音が濁りそうだったのでその方法は避けました。

ネットワークの製作

完成したネットワークがこちらです。ネットワークボードが小さくてきれいに配線をおさめることができませんでした。

ウーファーのネットワークボード

ツィーターのネットワークボード

もともとはウーファーのボード1枚でツィーター側も実装する予定だったのですが、回路規模が大きくなってしまったためやむを得ず2枚に分けました。木材の板に穴を開けてインサートナットを入れて、そこに丸型端子を使ってねじ止めすることで部品を固定しています。

ネットワークボード込みのインピーダンス特性

ほぼシミュレーション通りのインピーダンス特性になったのですが、5kHz付近のピークが小さくなってしまいました。おそらく部品の誤差の影響かと思います。シミュレーションしたところツィーター側のネットワークのコイルの値が設計より小さいとそのような状態になるようです。

総合特性にはあまり影響しなさそうなので、いったんこのままでいこうと思います。

次回の記事

ネットワークの完成までできたので、次は塗装とボードの格納です。

音を早く聴きたい気持ちがあるのですが、まだもう片チャンネルのエンクロージャーの修正が終わっていないのでもう少し時間がかかりそうです。

こつこつと作業を進めながら他のオーディオ機器も含めて環境を整えていきたいと思います。

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