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Scan-Speak Discoveryシリーズで自作2wayスピーカー - 過去記事一覧
- ユニットの選定
- ウーファーのT/Sパラメータ測定
- エンクロージャーの特性シミュレーション
- エンクロージャーサイズの決定
- エンクロージャーの詳細設計
- エンクロージャーの組立て
- Far Field測定とクロスオーバー周波数の検討
- Near Field測定
- 特性改善のためのエンクロージャー修正
- Far Field測定とNear Field測定をやり直し
- クロスオーバーネットワークの設計と製作
- エンクロージャーの塗装と組み込み
前回の記事でネットワークボードの組み込みとスピーカーユニットの取り付けが終わりました。
今回はNear Field測定を再度行い、ポート長と吸音材の量・位置を調整します。
ポート長の調整
まずは低域の音圧を見ながらポート長を調整していきます。
以前の記事では最適なポート長は63mmとしていました。
しかしネットワークボードを組み込んだことでエンクロージャー容積が減少し、 ポートの共振周波数が変わる可能性があるため、 少し長めの70mmから5mm単位で短くして調整していきます。
吸音材はエンクロージャー中心部にふわっと入れる程度で、ユニットとポートの中点付近にマイクを設置して測定しました。
ポート長 | Near Field測定結果(バッフルステップ込み) |
---|---|
70mm | |
65mm | |
60mm |
ポート長65mmか60mmがフラットな特性に近いようです。吸音材の量でも少し低域の特性は変わってくることが前回の測定でわかっているので、この2つを候補に進めます。
吸音材の調整
先ほどのポート長65mmでポート出口を測定した結果です。
1.8kHz付近に大きなピークがあることがわかります。これはエンクロージャーの定在波とポート長共鳴が重なることで強く出たものであるようです。吸音材で調整することでピークを下げられないか確認します。
このシミュレーション結果を見ると1.8kHz〜2kHz付近には幅方向と高さ方向の定在波が存在するようです。
すでに高さ方向には十分な量の吸音材を入れており、増やしてもポート出力の低域が低下するだけで共鳴のピークには影響がありませんでした。
したがって対策は幅方向に取るべきとなりました。ポート周辺の幅方向の壁付近に吸音材を追加します。
吸音材にはウーファー周辺にはサーモウール、ポート周辺にはホワイトキューオンを使っています。
吸音材を追加する前は低域のピークとの差が18dBほどでしたが、追加したことで20dB程度まで改善しました。完全にピークを消すことはできなかったですが昔の測定では差が15dBなかったことを考えると十分な改善であると思います。
なおポートの入り口周辺に吸音材を追加するパターンも試しましたが、ピークは大きく下がるものの低域も同時に大きく低下してしまったことから、採用は見送っています。
ポート長の決定
吸音材調整後に候補にあげたポート長 65mm、60mmで再度Near Field測定を行い、最終的なポート長を決めます。
ポート長 | Near Field測定結果(バッフルステップ込み) |
---|---|
65mm | |
60mm |
僅差ではあるのですが65mmの方が50Hz, 40Hz付近の音圧が高くなっており最低域まで伸びていそうです。60Hzより上の帯域では両者に差はなさそうです。
よってポート長は65mmに決定しました。
次回の記事
いよいよFar Field測定を行い、最終的にできあがった特性を確認します。
最初の記事を書いたのが2021年6月でしたので、構想から1年かかってようやく完成が近づいてきました。楽しみですね。