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ウェーブガイドを使ったデスクトップ小型2wayスピーカーの製作 - 過去記事一覧
- ユニットの検討とウーファーのT/Sパラメータの測定
- パッシブラジエータ型のエンクロージャーの設計
- エンクロージャーの組み立て
前回の記事でエンクロージャーの組み立てが終わりましたので、今回はNear Field測定の結果をもとに吸音材やパッシブラジエータの調整を行います。
Near Field測定
測定用マイクをユニットやパッシブラジエータから約5mmの位置に設置した状態でARTAで測定し、VituixCADの「Convert IR to FR」でImpulse responseからFrequency responseに変換します。
その後VituixCADのMergerを使ってパッシブラジエータの出力とウーファーの出力を合成します。
吸音材の調整
まずは吸音材を少しだけ入れた状態で測定してみます。
パッシブラジエータの出力(緑線)に1kHz付近に少し山ができています。これはエンクロージャー内部の奥行き方向の定在波の周波数と一致しているためその影響の可能性が高そうです。
吸音材を軽く追加してみましたが、測定結果には大きく変わりはありませんでした。
そこで吸音材をエンクロージャー全体にふわっと充填される程度にまで入れてみたのが以下の結果です。パッシブラジエータの出力の1kHz付近の山が小さくなりました。
今回のエンクロージャーではサイズの制約からパッシブラジエーターを側板中央に配置しています。中央は定在波が最も強く出る位置なので今回のような結果になったのでしょう。
この測定結果から吸音材は多めに入れた方が良いことがわかりました。
パッシブラジエータの変更と調整
ここまでの測定結果を見てきた方は低域の音圧が足りていないことに気づいたかもしれません。200Hz以下がダラ下がりになってしまっています。
以下の記事でエンクロージャーのシミュレーションを行った時のFbは約61Hzです。しかし今回の測定では約52Hzとかなり低く出ています。
VituixCADでシミュレーションを行うと、パッシブラジエータに25gほどの重りを追加するとそれくらいのFbになるようです。
この状態ではFbが低すぎますが、パッシブラジエータ方式ではFbを上げることは難しいです。エンクロージャーの容積を減らすくらいしか方法がありません。
そこでパッシブラジエータ自体を変更することにしました。
上記のエンクロージャーのシミュレーション記事では今回使用しているDSA175-PR以外にも同じフレーム形状のDS175-PRを候補としてあげていました。DS175-PRならエンクロージャーに何も変更を加えなくても取り付け可能ですので取り寄せて試してみます。
仮説としてはDSA175-PRはデータシートよりも振動系の重量が重いのではないか、ということです。
そこで届いたDS175-PRとDSA175-PRの重量を測ってみることにしました。フレーム形状が同じなので重さの差は振動系の重量の差になるはずです。
フレーム込みの重量を測るとDS175-PRが約195gなのに対してDSA175-PRは約220gと重たいという結果になりました。データシート上ではDS175-PRのMmsは36.6gで、DSA175-PRは30.7gとDSAの方が少し軽いのです。実測とデータシートが異なるとわかりました。
よって仮説は正しそうだと思ったので、DS175-PRに変更してもう一度測定してみます。シミュレーションでは約65Hzになるはずです。
Fbは約64Hzとなり、DSA175-PRを搭載した時と比べて低域がフラットに伸びています。シミュレーションに近い状態になって安心しました。
このままでは70Hz付近に少し膨らみができてしまっているので、Fbを下げるためにパッシブラジエータに重りを5g追加して再度測定を行いました。
約60-100Hzの間がほぼフラットな特性になり、これで問題なさそうです。f6は55Hzくらいでしょうか。
ネットワークボードを入れると少しエンクロージャー容積が減ってFbが上がると思うので、ネットワーク組み込み後に再度測定して調整しましょう。
次回の記事
次回はFar Field測定を行い、クロスオーバー周波数の検討を行います。