
本記事では、15cmウーファーを使ったバスレフ型2wayスピーカーの2作目として、前作の改善点を整理したうえでWavecor WF152BD05とTW030WA09を選定した理由を解説します。
VituixCADを初めて使って設計・製作したのがScan-Speak Discoveryシリーズを使ったバスレフ型2wayスピーカーでした。
少し前に製作したスピーカーセレクターを使って交互に切り替えながら聴き比べてみると、ピアノや弦楽器の音のリアルさではデスクトップ2wayスピーカーに負けるものの、やはり口径の大きさからくる最低域の量感や低域のこもりがあまりないといった良さもあるとわかりました。
ただデスクトップ2wayスピーカーと比べると測定上の特性のフラットさには欠けてしまっています。そこで15cmウーファーを使ったバスレフ型2wayスピーカーに再挑戦して、1作目を超える仕上がりを目指すことにしました。
改良すべき点と対策
まずは1作目のスピーカーで改善したい部分を洗い出します。
ツィーターの軸外特性
1作目では、最初のユニット選定の時点で軸外特性を正しく検討できておらず、結果としてPIRを整えると軸上が乱れるといった状態になってしまいました。
ポートの気柱共鳴
以下の記事で測定した結果からもわかる通りポートの気柱共鳴によるディップがくっきり出てしまっています。
ポート径を小さくして長さを短くすることで気柱共鳴の周波数をずらしてみましたが、完全には解決できませんでした。
これについては以下の対策を考えています
1. ポート位置をリアに移動
リアにポートをつけることで直接音としては耳に届きにくくなるので多少軽減されるでしょう。根本的な解決策ではありませんが、直接音への影響を軽減できます。
2. ポートの気柱共鳴と定在波の周波数をずらす
以下の記事で定在波の検討はしていましたが、全体的に各方向の定在波のピークが近くポートの気柱共鳴の周波数付近に余裕がありませんでした。
定在波とポート共鳴が重なると特性への影響が強まる傾向があるため、なるべくピークを離せるような設計になると良さそうです。
3. ツィーターとのクロスを下げる
ポートの気柱共鳴の周波数でウーファーの音圧の減衰をとれれば多少低減されるかもしれません。
口径の大きなツィーターを使うことでクロスオーバー周波数を下げることが可能とは思います。2kHzでのクロスであれば1.5kHzあたりでも数dBくらいの減衰はあるのかなと考えています。実現可能かどうかは測定・設計を進めてから判断します。
群遅延
低域を伸ばそうとした結果、容量の大きなエンクロージャーとなってしまっており、群遅延が大きくなっていました。
どこまで群遅延を許容するかは判断が難しい部分ではありますが、初期に検討した閾値からすると許容範囲内ではあったようです。この値は上回らないように設計を進めましょう。
エンクロージャーの物理的な大きさ
前述した群遅延の大きさもありますが、エンクロージャーが単純に大きくて置き場所を考えるのが難しいという物理的な問題がありました。
もう少し小さく作って取り回しを良くしたいという気持ちがあります。
ユニットの選択
前述した改良点を実現できるようにスピーカーユニットを選びましょう。
ウーファーWF152BD05の選定理由
1作目は低域で-6dBとなる周波数を52Hzにするという目標で約9Lのサイズのエンクロージャーを製作しました。今作ではもっとコンパクトなエンクロージャーを実現したいため、6L程度にしたいと思っています。
一方で低域の伸びがなくなってしまうと前作を超えたとは言い難い面もあるので、同じくf6が52Hzとなることを目標とします。
価格や入手性、データシートのT/Sパラメータの信頼性の観点からウーファーユニットをリストアップして、エンクロージャー容量を6L、ネットワーク抵抗を0.6Ωとしてバスレフ型のシミュレーションを行いました。なお低域がフラットにならなかったものは値を記載していません。

こうして表にしてみると、この設計条件ではWavecorのユニットが良好な結果を示しています。Wavecorのユニットは前作で満足いく音質であったことから、今作もWavecorを採用することとします。
候補となるWF152BD05とWF152BD09/10を比べてみると、データシート上ではWF152BD05の方がピークやディップが小さくて扱いやすそうです。
WF152BD09/10/11/12 6 inch die cast, Kevlar/Carbon fibre cone mid/woofers
ケブラー・カーボンコーンのユニットも聴いてみたい気持ちはありましたが、データシート上の特性の扱いやすさを優先し、ペーパー・グラスファイバーコーンのWF152BD05を採用することにしました。

ツィーターTW030WA09の選定理由
ウーファーがWavecorのものに決まったので、同メーカーのユニットで音色の統一感が得やすいと考え、同じWavecorから選んでいきたいと思います。前作はDayton Audioのツィーターでしたので、Wavecorのツィーターは初めて使います。
Wavecorのツィーターは口径が30mmと大きいラインアップがあり、全体的に指向性を整えたモデルが多いようです。その中から選んだのはTW030WA09です。

これは「自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック」の4章でも使われているツィーターで浅めのウェーブガイドのようなフェイスプレートが特徴です。
このフェイスプレートの効果かデータシートや海外の測定結果から軸外特性が整っているのがわかります。
マスターブックの4章の作例ではクロスオーバー周波数を2kHz以下に設定できており、今作でもツィーターとのクロスを下げられるかもしれません。
なおこのユニットはドームの素材の更新で廃番になって代替となる新規機種が出るようで、使うのは今回が最後になりそうです(執筆時点である2023年の情報です)。
次回の記事
これでVituixCADを使って設計するスピーカーは3作目になりますが、マスターブックと同じユニットを毎回どこかで使っています。そのユニットが選ばれるには理由があるんだとは感じられるようになりました。
スピーカーユニットの選定までできたので、次回は残りの改善ポイントを対策しながらバスレフ型のエンクロージャーを設計していきます。