前回の記事ではユニットの選定とエンクロージャーの再利用ができそうか検討しました。
ウーファーとして使うDayton Audio RS150-8のブレークインが終わったので、インピーダンスを測定してT/Sパラメータを算出しエンクロージャーの検討を進めます。
ウーファーのT/Sパラメータの算出
まずはLIMPを使ってインピーダンスを測定します。
Scan-Speak Discovery 2wayスピーカーを作ったときに治具などを作ったので、それらが流用できて助かりました。
2つのユニットの両方を測定してT/Sパラメータを算出した結果が以下です。参考値としてデータシートの値も並べてあります。
こうしてみるとどちらのユニットもデータシートに比較的近めの値が出ているものの、データシートから算出した値よりは大きめのエンクロージャーが必要になりそうです。
パラメータ | ユニットA | ユニットB | データシート |
---|---|---|---|
Fs | 45.01 Hz | 40.75 Hz | 47.8 Hz |
Re | 6.30 ohm | 6.30 ohm | 6.30 ohm |
Qt | 0.40 | 0.37 | 0.34 |
Qes | 0.52 | 0.50 | 0.43 |
Qms | 1.71 | 1.47 | 1.66 |
Mms | 6.84 g | 6.82 g | 7.4 g |
Rms | 1.135265 kg/s | 1.192706 kg/s | (記載なし) |
Cms | 1.827083 mm/N | 2.235468 mm/N | 1.63 mm/N |
Vas | 18.52 liters | 22.66 liters | 16.6 liters |
Bl | 4.827332 Tm | 4.712451 Tm | 5.59 Tm |
以降はユニットAの値を使って設計を行います。念のためユニットBの値でも特性の大きな変化がないことだけは確認しておきましょう。
エンクロージャーの検討
上記で求めたT/Sパラメータからエンクロージャーの検討に入ります。
まずはバスレフ型か密閉型か決めるためにEBPを求めてみたところ、それぞれのユニットで86.5, 81.5となりどちらの形式でもいけそうなことがわかりました。
バスレフ型でシミュレーション
そこでまずはバスレフ型でシミュレーションしてみます。SBB4/BB4アライメントで容積を求めると13.7リットルとなりました。ポートのチューニング周波数は約40Hzです。
この時の低域の再生限界となる周波数は以下です。
- f3 : 51.1 Hz
- f6 : 41.2 Hz
- f10 : 33.6 Hz
十分に低い帯域まで再生できているのですが、ネックなのが容積の大きさです。他のアライメントでも計算してみましたが、15リットル程度のエンクロージャーが必要になるようです。
今回はエンクロージャーが流用できないかなと期待していたのですが、そのエンクロージャーの容積では低域が膨らむような形にしかならず、流用は難しそうです。
密閉型でシミュレーション
EBPを求めたときに密閉型でも使えるのでないかとわかったので、そちらもシミュレーションしてみました。
Qtc0.707での密閉型エンクロージャーとしてシミュレーションしたのが以下です。
この時の低域の再生限界となる周波数は以下です。
- f3 : 76.6 Hz
- f6 : 59.1 Hz
- f10 : 46.2 Hz
バスレフ型の値と比べると高めになってしまっているものの、群遅延の小ささは魅力的です。
問題点としては、RS150-8はフェイズプラグをつけたユニットなので密閉型では空気漏れが発生してしまう可能性があります。
密閉型であればエンクロージャーが流用できそうで良いのですが、上記の空気漏れの懸念があって難しいのではないかと思います。
新しくエンクロージャーを作るなら?
検討結果からバスレフ型の方が良いと感じます。そしてバスレフ型なら新規にエンクロージャーを作ることになりそうです。
しかし15リットルとなると前回のScan-Speak Discovery 2wayスピーカーの容積の1.5倍になるため、ブックシェルフとしては大きめのエンクロージャーとなりそうです。
そこまで大きなエンクロージャーにするなら、いっそのこと3wayにしてしまっても良いかもしれません。
Dayton Audio RSシリーズにはミッドレンジとしてRS52AN-8があり、このユニットはデータシートを見る限りは特性が整っていそうです。
今使おうとしているウーファーRS150-8、ツィーターRST28A-4はともにアルミニウム振動板ですので、同じ材質の振動板を使っているRS52AN-8は音の統一感という点では相性が良さそうです。
Dayton Audio RSシリーズを使った3wayについては以下の書籍にも作例があります。
3wayにするとしたら、Scan-Speak Discovery 2wayスピーカーの高さをユニットに合わせて少し増やして、奥行きを容積に合わせて増やすような形になりそうです。奥行き方向に変わる部分が大きいので、見た目のサイズ感としてはそんなに変わらないでしょう。
一方でウーファーの口径が15cmしかなく、3wayとしては大きさが不足しているかなという気持ちはあります。
次回の記事
2wayでいくか3wayにするのか、もう少し検討してみましょう。
とはいえ、あまり検討材料となるものもないため、えいやで決めてしまわないといけないかもしれません。