
5リットル前後の小型2wayをサブ機として作りたいと考えており、本記事では、12cmウーファー Wavecor WF120BD03 を使ったデスクトップ向け小型2wayスピーカーの構想と、ウーファーのT/Sパラメータ測定を扱います。
まずは使用するスピーカーユニットの紹介とウーファーの測定から始めます。
※この記事は、デスクトップ向け12cm 2wayパッシブラジエータースピーカー「Scarlet Tanager」(製作記一覧)の製作記の一部です。完成仕様はレシピページにまとめています。
- ウーファー Wavecor WF120BD03の選択理由
- ウーファーのブレークイン
- ウーファーWavecor WF120BD03のT/Sパラメータの算出
- ウェーブガイドを搭載したツィーターの検討理由
- ウェーブガイド搭載ツィーターの候補
- どのツィーターを選ぶか?その理由
- ツィーターDayton Audio ND25FW-4の選択理由
- 次回の記事
- このスピーカーの完成仕様
ウーファー Wavecor WF120BD03の選択理由
今回はなるべく小型に作りたいものの、低域の伸びは妥協したくないので、Fsが低くQtsが小さめのユニットを選んでいきました。
12cmのユニットはあまり種類もありませんが、上記の条件を満たす選択肢としてあがったのがWavecorのウーファーWF120BD03です。
http://www.wavecor.com/html/wf120bd03_04_07_08.html
このウーファーはブレークアップの帯域を除くと比較的フラットな周波数特性をもっています。Wavecorの同サイズの他ウーファーの特性も確認していますが、他と比べても使いやすそうな特性でした。
Wavecor WF120BD03 midwoofer | HiFiCompass
高調波歪みについても、同価格帯のScan-Speak 12W/4524G00と比べて少し低めのようです。
ScanSpeak 12W/4524G00 | HiFiCompass
Wavecorは元Vifaのエンジニアが創業者であり、前作のScan-Speak 2wayと同様の音色が期待できるのではないでしょうか。
ウーファーのブレークイン
届いたウーファーはマグネットが大きく、振動板と同じくらいのサイズがあります。磁気回路の強力さに期待ができます。

早速、ウーファーのブレークインを行いました。30時間程度かけて2.83Vrms・25Hzのサイン波を鳴らします。
ウーファーWavecor WF120BD03のT/Sパラメータの算出
フリーエアと密閉箱に取りつけて、LIMPを使ってそれぞれの状態のインピーダンス測定を行い、その結果からT/Sパラメータを算出します。

| パラメータ | ユニットA | ユニットB | データシート(ブレークイン前) | データシート(ブレークイン後) |
|---|---|---|---|---|
| Fs (Hz) | 68.4 | 70.3 | 70 | (記載なし) |
| Re (ohm) | 3.13 | 3.26 | 3.2 | 3.2 |
| Qts | 0.40 | 0.42 | 0.42 | 0.37 |
| Qes | 0.43 | 0.46 | 0.46 | 0.40 |
| Qms | 5.52 | 6.03 | 5.9 | 6.0 |
| Mms (g) | 6.12 | 6.23 | 6.55 | 6.55 |
| Rms (kg/s) | 0.478 | 0.458 | 0.49 | 0.42 |
| Cms (mm/N) | 0.885 | 0.823 | 0.79 | 1.03 |
| Vas (liters) | 3.30 | 3.07 | 3.25 | 4.25 |
| Bl (Tm) | 4.35 | 4.44 | 4.5 | 4.5 |
全体的にデータシートのブレークイン前の値に近いようです。
データシートのブレークイン後の値は7.75Vrms・20Hzのサイン波を2時間流した後の値のようですので、今回のブレークインは弱すぎた可能性があります。
もう少し強めにブレークインして値が変わるのかを再度測定したいとは思いますが、データシートの値が信用できそうなことがわかったので、設計には入れそうです。
(2022/10/25 追記)
データシートに記載されている方法で強めにブレークインを行って再測定しました。データシートのブレークイン後の結果に近い値が得られました。
| パラメータ | ユニットA | ユニットB | データシート(ブレークイン前) | データシート(ブレークイン後) |
|---|---|---|---|---|
| Fs (Hz) | 66 | 67 | 70 | (記載なし) |
| Re (ohm) | 3.06 | 3.15 | 3.2 | 3.2 |
| Qts | 0.37 | 0.38 | 0.42 | 0.37 |
| Qes | 0.40 | 0.41 | 0.46 | 0.40 |
| Qms | 4.47 | 4.75 | 5.9 | 6.0 |
| Mms (g) | 5.87 | 6.01 | 6.55 | 6.55 |
| Rms (kg/s) | 0.55 | 0.54 | 0.49 | 0.42 |
| Cms (mm/N) | 0.99 | 0.94 | 0.79 | 1.03 |
| Vas (liters) | 3.68 | 3.49 | 3.25 | 4.25 |
| Bl (Tm) | 4.3 | 4.4 | 4.5 | 4.5 |
この測定で得られたユニットA, BのT/Sパラメータの平均値を使って、今後は設計を進めていこうと思います。
ウェーブガイドを搭載したツィーターの検討理由
本ブログでも大変参考にさせていただいている自作スピーカーマスターブックのブログで2Wayスピーカープロジェクト Śiva Projectというプロジェクトがあります。
このスピーカーでは、ウェーブガイドを搭載したツィーターを採用して指向性を整えたきれいな特性が実現されています。ウェーブガイドによる指向性制御は現在のトレンドのようでMJ誌の連載でも作例があります。
そこで今回の小型2wayスピーカーではウェーブガイドを搭載したツィーターを使うことにします。
ウェーブガイド搭載ツィーターの候補
Visatonなどから販売されている市販のウェーブガイドを後付けして使う手もありますが、どれもサイズが大きくて今回のウーファーのサイズ感に合うものはありません。
ウェーブガイドを搭載したツィーターであればちょうど良いサイズのものがあり、周波数特性を考慮すると以下の3つのユニットに絞られました。
候補1. Wavecor TW030WA11
https://www.wavecor.com/html/tw030wa11_12.html
30mmボイスコイルを搭載しコーティングされた繊維の振動板を使ったWavecorのツィーターです。
候補2. Dayton Audio ND25FW-4
https://www.daytonaudio.com/product/1280/nd25fw-4-1-soft-dome-neodymium-tweeter-with-waveguide-4-ohm
Śiva Projectで採用されている安価で特性も良いDayton Audioのソフトドームツィーターです。
候補3. SEAS 27TBCD/GB-DXT

マグネシウム/アルミニウム合金を振動板に採用したSEASのハードドームツィーターです。
どのツィーターを選ぶか?その理由
ウーファーと同じメーカーで選ぶならWavecor TW030WA11が良いと思います。しかしデータシート上ではスムーズな特性ではあるのですが、気になるのは以下の記事では軸上の周波数特性に乱れがあることです。
Dayton Audio ND25FW-4もデータシート上は非常にスムーズな特性を実現しています。ただこちらも参考にしたŚiva Projectでは軸上のレスポンスにはウェーブガイドの形状起因の乱れがあると指摘されています。
となると残るは SEAS 27TBCD/GB-DXT です。これは以下の2つの測定記事を見ても可聴帯域外のピーク以外に大きな問題は見当たりません。
これらの比較結果からするとSEAS 27TBCD/GB-DXTが最も良いと思いますが音を聴いたことはないので、メタルドーム特有の響きが気になる可能性はあるという点やウーファーとのキャラクターの違いが出るかどうかは気になってはいます。
SEAS 27TBCD/GB-DXTを選ぶと、以下の構成のミニバージョンといった感じになりそうですね。
以下の書籍ではWavecorの違うユニットを使った作例が紹介させており、その中では柔らい音という評価があります。このユニットもそういう音の傾向ならハードドームのツィーターは音色が合わないかもしれません。
ツィーターDayton Audio ND25FW-4の選択理由
各候補を検討した結果、Dayton Audio ND25FW-4を採用することにしました。
Dayton Audio - ND25FW-4 1" Soft Dome Neodymium Tweeter with Waveguide 4 Ohm
決め手となったのは、2Wayスピーカープロジェクト Śiva Projectの作者のだしさんがフラッシュマウントおよびバッフル面取りによって特性が改善したとXに投稿されていたのを見かけたことです。
ソフトドームということもあり、前述のウーファーとの音色の違いはあまり起きないだろうという点も理由になります。 他の候補と比べて安価なこのツィーターがどのような音を奏でるのか楽しみです。
次回の記事
求めたT/Sパラメータから次回はエンクロージャーの詳細な設計を行う予定です。
パッシブラジエーターを使う構成も面白いなと感じたので、それを含めて次の記事で検討してみたいと思います。
このスピーカーの完成仕様
ユニット構成・エンクロージャー寸法・クロスオーバー定数・実測特性はレシピページにまとめています。

