
前回の記事でクロスオーバーネットワーク基板を改修したパッシブラジエーター搭載2wayスピーカー(Project: Scarlet Tanager)ですが、今回は Near Field測定を用いた吸音材の調整と、パッシブラジエーターの重り最適化 を行います。

昨年末のアニソンオーディオフェス2024に出展した際に、会場の音量ではパッシブラジエーターからの中高音の漏れが気になったことがきっかけです。
次回出展予定のDIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025でも同様の条件が予想されるため、再調整を行いました。
- 吸音材の配置を変えて測定
- 吸音材の種類による違い
- 背板にパッキンを追加
- パッシブラジエーターの重りの調整
- DIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025に出展します(再掲)
吸音材の配置を変えて測定
耳による聴感だけでは判断が難しいため、吸音材のパターンごとにNear Field測定を行い、 低域のピークと500Hz付近のピークの差を算出して比較しました。差が最も大きいパターンを採用します。
| パターン | 測定結果 | 差 |
|---|---|---|
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約-23.5dB |
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約-22dB |
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約-23dB |
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約-22.5dB |
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約-23dB |
グラフを見るとどのパターンも似たり寄ったりです。僅差ですが「密度の低いホワイトキューオンを全体に入れる」パターンが最も差が大きいようです。
ウーファーの直接音がパッシブラジエーターから漏れると考え、吸音材で区切る構成を試していましたが、むしろ全体にふんわり入れた方が漏れが小さくなるという意外な結果になりました。
アニソンオーディオフェス2024では「区切るようにフェルトを入れる+隙間にホワイトキューオン」パターンにしていたため、今回の調整で約1dBほど改善が見込めそうです。
吸音材の種類による違い
続いて、吸音材の素材自体による違いを確認します。 「全体に入れる」条件を固定し、ホワイトキューオンとサーモウールを比較しました。
(※別日に測定しているため、絶対値は直接比較できません)
| パターン | 測定結果 | 差 |
|---|---|---|
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約-23dB |
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約-22.5dB |
ほとんと差がわかりませんが、ホワイトキューオンの方がピークのギザギザがやや小さく、その影響で差もわずかに大きかったです。 ただし全体的に差は小さいため、最終的には聴感での好みで決めても良さそうです。
背板にパッキンを追加
前回の記事で引用した過去のインピーダンス測定において、50Hz付近の値がシミュレーションより低いことに気づきました。 経験上、これはエンクロージャーからのわずかな空気漏れで発生することが多い現象です。
確認したところ、改修時に製作した背板にパッキンを取り付け忘れていたことが判明。厚紙でパッキンを製作し、貼り付けて対処しました。


この修正後の状態でインピーダンスを再測定し、空気漏れによる低下が解消されたことを確認しています。
パッシブラジエーターの重りの調整
吸音材の配置を見直したことで、パッシブラジエーターの動作にも影響が出る可能性があります。これまでの記事ではパッシブラジエーターの重りは0g(なし)で良いと判明していますが、再度測定を実施しました。

Near Field測定でウーファーとパッシブラジエーターの出力を個別に測り、VituixCADのMerger機能でディフラクション補正を入れて合成しています。
吸音材を増やした影響で以前の測定より低域の音圧がやや下がっていますが、おおむね低域がフラットに伸びているため重りは0gのままで十分と判断しました。
トータルの特性の測定後に聴感で低域不足が気になるようであれば、吸音材を減らしたいと思います。
DIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025に出展します(再掲)

このスピーカーを出展予定のDIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025は10月12日(日)に大阪で開催です。
今年も、測定を生かした設計を行う8組の出展者が集まりました。 実際にそれぞれの作品を聴き比べられる、貴重な機会です。 各作品の工夫や設計思想に興味のある方は、ぜひ会場までお越しください。
次回はイベント終了後に、簡易な出展レポートと最終的な調整、測定・試聴結果をまとめる予定です。












