
前回の記事で述べた高域の音が耳に刺さる感じを受けた点について、その原因を探りつつ改善を行うことにしました。
改善ポイントの見当をつける
PIRの傾きは-0.97dB/octで設計しましたが、実際に組み込んで測定した結果を改めて確認すると、-0.76dB/oct程度になっていました。
原因ははっきりしませんが、設計値よりも高域の傾きがゆるやかになっており、結果として高域寄りのバランスになっているようです。この実測値を見ると、聴感上で高域に粗さを感じた点についても、測定結果から一定の説明がつきます。

DIY Loudspeaker Builder's Meeting 2025への出展後に、
「高音域のボーカル部分で少し違和感がある。ウーファーの減衰カーブの肩の部分が影響しているのではないか。」
という感想もいただきました。
LPF側の減衰がやや不十分で、ウーファーの出力が高域側まで伸びてしまっていて、それによる音の濁りが聴こえている可能性が考えられます。 そこで、この点についても合わせて調整を行うことにしました。
クロスオーバーネットワークの定数変更
もともとの設計では、PIRの傾きを-0.97dB/octに設定していました。Listening Windowの20kHz付近を基準に約-2dB下げるには、PIRの傾きを-1.04dB/oct程度にするのが良さそうです。
製作した基板はそのまま活かしたかったため、今回は定数の変更によって対応することにしました。 変更後のクロスオーバーネットワーク回路を以下に示します。

見た目には間違い探しのような差ですが、以下の定数を見直しました。
- HPF 1段目 コンデンサ 2.68uF → 3.0uF
- HPF 2段目 コンデンサ 6.6uF → 6.8uF
- HPF ノッチフィルター コンデンサ 0.1uF → 0.15uF
- HPF アッテネーター 6.9Ω → 9.0Ω
- LPF 1段目 コンデンサ 15.0uF → 20.0uF
- LPF 上のコンデンサとの直列の抵抗 1.0Ω → 0.68Ω
- LPF ノッチフィルター 1.5uF → 2.2uF
- LPF ノッチフィルターの抵抗 4.7Ω → 4.3Ω
全体としては、HPF側で高域のレベルを抑えつつ、LPF側ではウーファーの高域の減衰を強める方向で調整しています。
変更前後のシミュレーション結果を比較したものが以下です。鎖線が変更前、実線が変更後の特性を示しています。

クロスオーバーネットワーク基板の部品を変更
部品を変更した基板が以下です。一部の部品は手持ちのものを使ったので、回路図と一部異なる点もありますが、影響が軽微であることはシミュレーションで確認しています。


修正した基板をエンクロージャーに組み込んで、インピーダンス測定を行い、正しく実装できていることを確認しました。



聴感上の変化
DIY Loudspeaker Builder's Meeting 2025の課題曲であった白鳥英美子さんの「さくら(独唱)」を改めて聴いてみると、歌声が力強くなる部分で感じていたハスキー気味の表現は抑えられ、聴いていて疲れにくい、より自然なバランスになったと感じました。
最終的な特性はまだ測定できていませんが、少なくとも聴感上では、完成度を一段階引き上げることができた手応えがあります。
基板の販売について
DIY Loudspeaker Builder's Meeting 2025では、余剰分のクロスオーバーネットワーク基板をアウトレットとして販売していましたが、イベント後もいくつか在庫が残りました。 そこで今回、試験的にオンラインショップでの委託販売を行うことにしました。
プリント基板は少量(例えば2枚だけ)といった発注ができないため、どうしても余りが出てしまいます。 手元に保管したままにしておくよりも、似たような2wayスピーカーを製作されている方の参考や助けになればと思い、販売することにしました。
今後も、同様に共有できそうな基板や部品があれば、状況を見ながら順次並べていく予定です。 ご興味がありましたら、ぜひご覧ください。
次回の記事
次回は、今回調整したクロスオーバーネットワークを反映した最終的な特性を測定し、完成としたいと思います。