
去年に製作したパッシブラジエーター搭載2wayスピーカー(Project: Scarlet Tanager)ですが、今回はその続きになります。
このスピーカーは、昨年末のアニソンオーディオフェス2024に出展し、多くの方から良いコメントをいただきました。詳しいイベントの様子はイベントページやkato19さんのレポートなどをご覧いただければと思います。
出展を通じていくつか改善点が見えてきたため、ここから数回に分けてアップデートを行っていく予定です。
その第一弾として、今回は クロスオーバーネットワーク基板の改修 を取り上げます。
- 実測したインピーダンスがシミュレーションより低いのはなぜ?
- 部品が手に入りにくい問題
- 新規設計した基板
- 製作した基板
- インピーダンス測定とシミュレーション結果との比較
- まとめ
- 次回予告
- DIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025に出展します
実測したインピーダンスがシミュレーションより低いのはなぜ?
まず、前回掲載したインピーダンスのグラフと、それに対する自分のコメントを引用します。

測定結果をみるとHPF側はシミュレーションとほぼ一致していますが、LPF側は高域で少し乖離があるようです。 LPF側には14AWGの空芯コイルを使っており、線間容量の影響で高域のインピーダンスが下がっている可能性があります。これがクロスオーバー付近の位相に影響しそうなので、この点は今後のブラッシュアップ課題です。
確かに線間容量の影響はあると思いますが、私の作例ではこうした高域のインピーダンス低下がよく見られる一方で、他の方の作例ではあまり報告を聞きません。
そこで共通点を考えてみると、私の場合はプリント基板を使ったネットワークボードで発生していることに気づきました。
製作した基板のパターンを確認すると、インダクタの下にベタパターンが通っており、パターンとインダクタの銅線で寄生容量が生じ、コンデンサのように作用してインピーダンスが低下しているのではないかと推測しました。
部品が手に入りにくい問題
このクロスオーバーネットワーク基板では、小型エンクロージャーに収めるために入手しづらい部品を採用していました。また一部の部品、特にターミナルは最近は販売店で欠品が続いており、そのままでは新規製作が難しい状況です。
そのため、入手しやすい部品を使えるように基板を改修することにしました。前回はHPF側の基板を過去の作品から流用したため仕上がりに難がありましたが、このタイミングでLPF側と合わせて新規設計することにしました。
新規設計した基板
上記の課題を解決するため、新規に基板を設計して発注しました。

今回は部品が映える黒レジスト仕上げです。製作費削減のためHPFとLPFを1枚の基板にまとめ、切り離して使う構成にしました。
また、入手が難しくなっていたターミナルについては、廣杉計器製の金メッキターミナルを採用できるように設計しています。
なおクロスオーバーネットワークの回路そのものは大きく変更しておらず、部品の入手性を考慮して一部定数を微調整した程度です。

製作した基板
部品をはんだ付けし、完成した基板がこちらです。 黒レジストに部品を載せると、見た目が引き締まって仕上がりも美しく感じられます。

インピーダンス測定とシミュレーション結果との比較
新基板でのインピーダンスを測定し、シミュレーションとの比較を行いました。
| 対象 | グラフ |
|---|---|
| LPF | |
| HPF | |
| トータル | |
結果として、課題だったLPF側の高域インピーダンス低下は大幅に改善しました。以前のネットワークボードでは10kHzで約5Ωの低下がありましたが、今回の基板では1Ω程度に収まっています。また、位相のずれも小さくなっていることが確認できました。
まとめ
今回の改修で、クロスオーバーネットワークをプリント基板化する際には 「インダクタの下にベタパターンを通さないこと」 の効果が大きいと確認できました。
詳しい方からすれば基本的な注意点かもしれませんが、実際に測定で改善が確認できたのは学びでした。今後は他の作例の基板も順次改修していきたいと思います。
次回予告
次回は Near Field測定による吸音材の調整 をテーマにした記事になる予定です。パッシブラジエーターからの音漏れがどのように変化するのか、実測結果とあわせて紹介します。
DIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025に出展します

2025年10月12日(日)に大阪で開催される DIY Loudspeaker Builder’s Meeting 2025 に、今年も出展します。今年は作品多数のため、昨年より開演時間を繰り上げての開催とのことです。
今回ご紹介したスピーカーを会場に持ち込みますので、音が気になっている方はぜひお越しください。


