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Wavecor & SEASのユニットで作るバスレフ型2wayスピーカー - 過去記事一覧
- 設計方針とユニットの選択
- エンクロージャーの設計
- エンクロージャーの組み立て
- Near Field測定とFar Field測定
- ツィーター変更とエンクロージャーの改善・塗装の仕上げ
- 測定データからポート長とクロスオーバー周波数の検討を行う
- VituixCADでクロスオーバーネットワークを設計する
- クロスオーバーネットワークボードの製作
- トータル特性の測定と試聴 & チューニング
12月の記事で完成したこのスピーカーは、アニソンオーディオフェス2023で出展させていただいたところ、さまざまなご感想をいただきました。
その中で気になる感想としてウーファーの色が強く出過ぎているのではないかというものがありました。自分も同様のことは感じてはいて、改善したいとは思っていました。
また12月の時点では製作時間の関係でネットワークボードの配置の最適化ができておらず、ボード上に余白が多く存在します。スペース効率を改善すれば音質的に良いと聞く大きめのコンデンサを使うこともできるため、ネットワークボードの再設計を行いました。
ツィーター側のネットワークボードの改良
ツィーター側(HPF)のネットワークボードは、大きなコンデンサが載せられるように配置を見直しました。またアッテネータ抵抗を並列接続に変更した結果、亀の子状態になっていたので平面に配置できるように修正しました。部品の定数は変更していません。
ノッチフィルターのコンデンサはJantzen Audio Standard-Z Capにしました。無誘導巻きなので安心感があります。抵抗も同じく無誘導巻きのSolen AchrOhmiCを採用しました。
音質的な影響が強そうなHPFの1段目のコンデンサはMundorf EVO 450を試しています。ここはSolen Silver Capのサイズまでであれば載るようにしてあるので、他のコンデンサも機会があれば試聴したいところです。本当はJantzen Audio Superior Z-Capあたりが載せられれば良いのですが、このサイズが限界でした。
ウーファー側のネットワークボードの改良
ウーファー側(LPF)のネットワークボードは手持ちの部品の関係でフェライトコアのコイルを使っていました。フェライトコアは磁気飽和が起こりやすいようで、鉄芯コイルに変更したいと思います。
また部品配置の最適化ができておらず、スペースの関係から電解コンデンサを多用していました。この電解コンデンサの多用がウーファー側の音色のキャラクターを強くしているのではないかと考えています。そこでフィルムコンデンサを使えるように部品配置を見直しました。
LPFの1段目のコイルはBSN Iron Coreコイルを巻き戻して使いました。2段目はSolenのリッツ線コイルです。線径の太いコイルは高域でのインピーダンス低下が現れるので、リッツ線コイルを採用してみた次第です。
以前のボードでは数多く採用されていたPARC Audioの電解コンデンサは1つまで減らし、代わりにJantzen Audio Standard-Z CapやERSE Pulse-Xなどのフィルムコンデンサを使用しました。手に入る部品の関係でLPFのコンデンサ部分の定数の小さな変更は行なっていますが、シミュレーション上は影響は微々たるものかと思います。
インピーダンス測定による確認
インピーダンス測定を行い、以前のネットワークボードと変わらない状態になっているかを確認しました。緑のラインが新バージョンで、黄色が旧バージョンです。
グラフを見るとLPF側だけ高域でのインピーダンス低下が見られます。変更した部分で怪しそうなところはLPF1段目のコイルです。
フェライトコアコイルと鉄芯コイルをLCRメータで測定してみます。測定の周波数を10kHzまであげると2つのコイルのインダクタンスに差が出ることがわかりました。
測定と聴感による変更
上記で測定した通り、LPF1段目のコイルが10kHzで0.47mHまでインダクタンスが低下するとして、VituixCADのシミュレーションでその定数に変更した場合にウーファーの高域部分のカットがどの程度弱くなるかを確認します。ノッチフィルターの定数変更を行う程度の変更で、もともとの減衰カーブが再現できそうであったので、その変更を行いました。
この状態で組み込んで音楽を聴いてみると、狙い通りウーファーのキャラクターの強い感じはなくなりました。ただ音があっさりしすぎている感じがします。そこでLPFの定数調整につかっているフィルムコンデンサを元のPARC Audioの電解コンデンサに戻しました。
ノッチフィルターは直列に抵抗を入れたくなったので亀の子状態になってしまいました。この程度の変更で基板を作り直すと金銭的コストが馬鹿にならないので仕方ありません。あまり発熱する部分ではないはずなので大丈夫でしょう。
小容量のフィルムコンデンサを電解コンデンサに戻したことで、元のモニタースピーカーのような低音感が少し戻りました。以前のネットワークに比べるとウーファーの色の濃さも弱くなり、ノッチフィルターの変更の影響かもしれませんがツィーターの音がよく聴こえるようになったように感じます。
一方でツィーター側の変更はあまり変化が感じられませんでした。ただ女性ボーカルの高音の伸びが前と比べて少しおとなしくなってしまったように感じるので、そのあたりは調整してみても良いかもしれません。
ただこのあたりは上流の機材を整えてからでないと違いがわかりにくそうなので、調整するにしてもそちらが先かなと感じています。
次回の記事
前回の測定からいくつかのネットワークの変更を行なったので、時間があるときにトータルでの特性を再測定したいと思っています。