自作2wayスピーカーのネットワークのクロスオーバーをシミュレーションを用いて設計し直す

自作スピーカーを再開しようと思うにあたり、最近の自作環境を調べていたところVituixCADが非常に高機能であることを知り、AudiFillさんが日本語で解説してくれているページを見て一度触ってみることにしました。

製作の方針

初めてのソフトウェアで、いきなり新規設計で新しくスピーカーを作るというのは冒険しすぎに感じたので、まず手持ちのSB Acousticsのユニットを使った自作2wayスピーカーのネットワーク回路を変えることに着手することにした次第です。

10年ほど前に作ったSB Acousticsの2wayスピーカーですが、他のスピーカーと比べるとボーカル帯域が引っ込む感じがあり、あまり常用されない状態になっていました。

今回の改修でそういった面が改善できたら良いなと思っています。

以前の設計はブログに残っているのですが、だいぶ忘れてしまっている面もあるので、ゼロベースで作り直していきます。

クロスオーバー周波数を決める

まずウーファーとして使用しているSB15NRXC30-8の周波数特性を確認します。

ウーファーのSPL

目につくのが6kHzから9kHzにかけての大きな山です。これはツィーターの担当する音域に影響するので潰す必要があるでしょう。

このウーファーは2kHzあたりから音の指向性が高くなっており、正面以外の角度での音圧が下がっています。 ということで、クロスオーバーさせる周波数は3kHz以下にしたくなります。

ツィーターのほうはどうでしょうか。SB25STAC-C000-4の周波数特性を見ると、3.8kHzあたりでガクッと落ちるディップがあります。

ツィーターのSPL

このディップを埋めたいと考えると、ウーファーとのクロスは高めに設定した方が良さそうです。

ウーファーは2kHzから3kHzの間にしたい、特に指向性の点から2kHz前半が良いが、ツィーターはできるだけ高い周波数でクロスさせたいという2点を考慮して、クロスオーバー周波数を2.5kHzで設計します。

ネットワーク回路のシミュレーション

ユニットのデータシートから必要な項目を入力します。また箱はすでにあるバスレフボックスを使うので、それもシミュレーションに組み込みます。バッフルステップ補正も入れれば準備完了です。

クロス部分で4次のLinkwitz–Rileyフィルターの特性を目指し、全体としてフラットな特性を狙ったネットワーク回路が以下です。

新ネットワーク回路のシミュレーション結果

ツィーターとウーファーについては、過去の計測でインパルス応答で200usだけウーファーが遅いことがわかっています。そのため、それをDriverのウーファーのdelayに指定しています。

ウーファーのネットワーク回路

ウーファーのネットワーク回路を見てましょう。この回路は4次のLCネットワークをベースに2つのディッピングフィルターを組み合わせています。

ローパスフィルター回路

後段の0.7mHコイルについているフィルターは、約7kHzを狙っており、先述した6kHzから9kHzにかけての大きな山を潰すためのフィルターです。

前段の0.8mHコイルのフィルターは、500Hz〜1kHzに現れる山を抑えるためのフィルターです。

データシート上はそこまで大きな山ではないのですが、バッフルステップ補正の影響で大きな山ができることがシミュレーションでわかりました。それを補正するために入れています。

ツィーターのネットワーク回路

ツィーター側はシンプルな回路で3次のLCネットワークにアッテネーターを加えただけの回路です。

ハイパスフィルター回路

ユニット自体の特性が素直なので特に変わったことはしていません。

ウーファー側が4次でツィーター側が3次とずれていますが、シミュレーション上はこれで位相がぴったりと合うことがわかっています。以下のようにユニットの極性を逆にするときれいにディップが出ます。

ユニットを正相にした場合

まとめ

VituixCADは高機能で、このようなシミュレーションがたった3、4日くらいでできました。10年前とは大きく環境が変わっていますね。

このネットワーク回路でどのように音の変化があるのかが楽しみです。

またシミュレーションと実際の特性がどの程度一致するのか検証してみたいと思っています。

続編

本文と同じくVituixCADを使ってScan-Speak Discoveryシリーズを使った2wayスピーカーの設計・製作を行っています。

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