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『ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解』を読んだ

読書
ゆとりの法則 ? 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

ゆとりの法則 ? 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解

 

 

まずタイトルを見て思ったのは「管理」ではなく「マネジメント」ってカタカナ語を使ってほしかった。

おそらく「management」の訳として「管理」は適切な訳語だとは思うんだけど、日本語で「管理」というとどちらかというと「control」という感じのニュアンスが出てしまう。

経営学的な「マネジメント」ってどちらかというと「encourage」な感じのほうが強い。

あくまで個人的な感覚だけど、マネジメントってカタカナ語のほうがしっくりくる内容だった。



さて、前置きはこれくらいにして、内容を追っていく。

この本はタイトルにあるように「ゆとり」がプロジェクトマネジメントにおいて重要であることを説く本だ。


「ゆとり」とは、会社の業務に追われて余裕のない時間以外の時間である。(中略)組織が効果的に機能し、成長するには、あらゆる階層にゆとりが必要である。ゆとりは変化の潤滑剤だ。


よくプロジェクトで聞かれる言葉の「とにかく早く」「最短で」に相反する言葉の「ゆとりをもって」。

「ゆとり」がないと組織は滅びに向かっていくということを説いている。



労働者を効率よく使うためにすべての「ゆとり」を排除すると対応の速さが犠牲になる。

なぜか。すべての「ゆとり」を排除するには労働者の仕事を山積みにしておけばいいわけだが、その状態で新しい仕事を積んでもすぐには対応できないからだ。


退職者を面接したときにみられる共通の特徴は、辞める人が「使われた」と感じていることだ。 (中略) 企業が労働者の生産能力をめいっぱい引き出すことに成功するほど、離職と、それにともなう人的資本の損失の危機は高まるのである。一方、人材が長く残る場合、個人の成長が動機づけになっていることが多い。組織が敏捷であること、変化を受け入れる健全な能力があることは、個人にこのような成長の機会を与えるための重要な要因である。


仕事を山積みにして効率を上げるということは、組織の敏捷さが失われ、変化に対応しずらくなる。

そのような組織では成長の機会などあるわけがなく、自身の成長をモチベーションとしている人材は去っていく。


プレッシャーを使うことを優先させているのは、ストレスの蔓延した組織である。(中略)プレッシャーをかけすぎると、長期的な影響として、重要な人材が士気を失い、燃え尽き、流出する。優秀な管理者は、プレッシャーをめったに使わず、また長期間にわたって使うこともない。

急かす管理者は、人的資本の消費を加速させているにすぎない。

消費が加速されてパフォーマンスが上がるならまだしも、その消費に見合ったパフォーマンスを得ることはできない。

人的資本はすぐには代替できない。
人的資本が流出するということは費用が発生することと同義である。

その費用と「ゆとり」によって失われる労働力のどちらが大きいかはちゃんと考えなければならない。

もし、人的資本の蓄積がそれほど必要とされない場合は、人的資本の流出による費用は少ないと考えられるので、特に「ゆとり」を与える必要はないかもしれない。


ストレス過剰の組織は、いつも人手不足だと言いたくなる。
プロジェクトに人員を投入しすぎると、少人数の場合より完成にまで時間がかかる。


ほぼ不可能に近いスケジュールをつきつけられた管理者は、人員を増やして対処する。

ただ、人員を増やしたところで、概念設計などの基本的な部分は少人数で行ったほうが効率が良い。

では、なぜ人員を増やすのか。

それは変えられないスケジュールのなかで最善を尽くしたということをみせかけるためである。


「安全速度」で目的地に到達するまでの時間と、「危険速度」で到達するまでの時間の差がゆとりである。ゆとりは、すばやく、しかも破綻せずに到着するためのものだ。



 ここでいう「危険速度」とは必要な物事がすべてうまくいくと仮定したときに可能となる進行速度である。

「安全速度」は物事を行う上でリスクとなる事を許容できる範囲まで小さくしたときの進行速度である。

当たり前のことであるが、必要な物事がすべてうまくいくなんてことはめったにない。

そのときに「ゆとり」が予め用意されていなければ、先にあったように人的資本を加速的に消費するしかない。

その後どうなるかは先に述べた通りである。


ゆとりは一種の投資である。

この一言に尽きる。


だんだん長くなってきたので、ほんとに重要だと思ったところしか書けなかったが、本のなかでは管理者や目標管理、リスク管理、組織構造などについて更に詳細に述べている。

プロジェクトマネジメントをする人は、ぜひとも読んでほしいと思う本だった。

 

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